俳句

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私の職場は地域新聞の編集室で、取材から営業からDTPからなんでもするが、メインでは文化講座を企画運営する仕事をしている。

この講座を企画してよかった・・・・と思えるひと時。

以下、講師が俳句の同人誌に寄稿したもの。

 大空よ海には海の青がある

 この項の本旨は海の悲しいまでの青さだが、まず「さくら」の話からさせていただく。
 横浜で『俳句で遊ぶ』講座をやらせて貰っていることは、本紙でもお伝えいただいている。そこでの話である。
「目に見えるもの」に語らせる句をいろいろ俎上に上げていて、次の句が思わぬ展開をみせた。
  ちるさくら海あおければ海へちる
               高屋窓秋
「海の青とさくらの花びらの対比が鮮やかですね。見えるのは海辺の崖に咲く桜の花びらでしょうか」
といって、次の句に移ろうとしたとき、遠慮がちの声があった。品よく歳月を重ねた草笛光子によく似た雰囲気の女性だ。
「あのぉ……、よろしいでしょうか、お聞きしても」
「はい、どうぞ」
「この句の作者を、ご存知ですか」
「いいえ、知りません。なにか気になることでも……」
「もしかして、かなりの年配の方ではないかとおもいまして。戦争で身内の方を海で亡くしたとか……」
 どよめきが起こったのはこのときだ。みんな思い当たったのだろう。口々に呟く声がした。
「同期のさくら。航空隊」
「咲いた花なら散るのは覚悟……」
「海ゆかば……」
 土果は一瞬、目の前が白くなった。そこまで読めなかった。悔恨で白くなった脳裏に知覧の空と海、特攻平和会館の白い柱と壁が蘇った。
 30年近く前のことだが、体が覚えている。展示されている十七歳の少年の遺書の健気さに体が硬直したのだ。むごい。
 ホタルの碑がある。この話は映画にも取り上げられたから、ご存知の方も多いだろう。話はこうだ。
 隊員の憩いの場であった富屋食堂の“おばちゃん”(鳥浜とめさん)に、宮川三郎軍曹が言った。
「明朝、沖縄に発ちます。敵艦をやっつけてきます。帰ったら宮川よくやったと、喜んでください」
「どげんして帰らすの」
「ホタルになって帰ります」
 翌晩、食堂の裏にホタルが現れた。とめさんは、「さぶちゃんが戻った」といって、仲間を呼んだ。そして、誰ともなく歌いだしたのが『同期の桜』だったという。
 沖縄の海は青かった。「海あおければ海にちる」のである。土果も涙腺が脆くなっている。教室が湿っぽくなった。

私が企画している講座を受講して下さっているのは70代以上が中心。
90歳を超える方もいる。

皆さんあふれんばかりの向上心をお持ちの方々で、本当によく勉強されている。
知識はもちろん、人としても教わることが多く、いい仕事をさせてもらってるなぁ・・・と思う。

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