イタリアバムツアー チマグランデ コミチルート

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荷物が届かず、予定通りに動けなかったこと、いったん風が吹くと、吹きさらしの独立岩峰のため状況は非常に悪く、天気のいい日に挑戦したかったため、日程を調整し残された日は今日一日。もしビバークとなっても、次の日の夜までにミラノに行けば何とかなる、という状況で本命チマグランデにやっと取り付きました。Cima Grande di Lavaedoの北壁コミチルートがターゲットです。全17ピッチ行程500メートル、最初の300メートルほどがかぶっているため敗退は不可。登るしかありません。核心は前半10ピッチほど続く10台(11くらいあってもよくない??)の部分。オールフリーで登るのが目標でしたが、さすがに六大北壁の一つ、登り応えどころか、私にはまだまだ早い挑戦だったようです。ラインも無理がなく、独立岩峰で景色も最高、天気にも恵まれ、こんな好条件で挑戦できて本当によかった。少しでも条件が悪かったらと思うと、ホントに怖い。

朝3時起床。星の瞬く中取り付きまで歩きます。このとき気温は3度くらい。冬の城山を思い出します。
最初についたのは私たちでしたが、ぞくぞくとヘッドランプの光が近づいてきて、人気の壁であることがわかります。写真と見比べ、取り付きと思い1ピッチ進む。・・・なんか変だぞ、1ピッチ目ってノーザイルでも行けると書いてあったよね・・・グレード辛いといってもいくらなんでも・・・と不審に思い、他のパーティーに聞いてみるとやはり間違ってる。もっと高グレードのルートに入ってしまいました。幸運にもまだ懸垂で下りられたので、仕切りなおし。
コミチルートに取り付けたのはすでに7時半。何パーティーかの後ろになりました。
2ピッチ目でいきなり10台とは思えない厳しいムーブ。ここでみんなテンションが入り、早くもフリーで登るという目標が終わってしまいました。でもまずは登らなくては。核心部分のすべてのピッチをかーばたさんにリードしてもらうという情けない状況。かーばたさんの凄さを再認識。

気温は北壁のため日が当たらず一日一桁台。指が冷たいのではなく、いきなり痛くなります。でもスポーツルートと違ってテンションはほとんどかけないつもりで登らなくてはならないので、トップのビレイヤーのところまでたどり着いたときは、指がビリビリ痛くて手袋がはめられない状態。ガバを持っていると視認はしていても指はまったく感覚なし。こんな調子で進み、5OR6ピッチ目あたり、今まではとりあえずフリーにこだわったつもりで登ってきましたが、急に体の力がなくなったのがわかりました。落ちるわけに行かない、時間が勝負なのはすでにこの時点で意識し始めていたので、迷わずA0。ここで愕然としたのがA0をしているのに体が上げられない状態にまでなっていたこと。この瞬間私の目標が「登ること」、からなんとか最後まで「抜けること」に変わりました。頭は本当に抜けられないかも、という不安でいっぱい。そんな状態が2ピッチほど続いたあと、急にまた体が楽になったのが不思議でした。グレードが楽になったのか、気持ちが落ち着いたのかはいっぱいいっぱいでわからなかったけれど、また自分の力で登り始められたときは本当に嬉しかった。その後も頑張ればなんとかなりそうなところでも、時間がかかるか体力を余計に使うかと思われるところは迷わずA0で行きました。
10数ピッチで核心が終わり、えのっきーがリードを交代。2ピッチほど行きましたが、やはりまた壁がせりあがってくるとかーばたさんに交代。えのっきーでもだめなのか・・・・。やっぱり厳しいんだね、この壁。最後の核心、ハング上の大トラバースを入れた3ピッチを残すところで完全に日没、22時を回る。このトラバースは先行のパーティーが行くのを見てるだけで、トラバースが苦手な私は心臓が口から出ちゃいそうなピッチ。しかし不幸中の幸い。暗ければ下見えないんだね。グレードが低いピッチということもあるんだけど、下が見えないので意外と安心してクリアできました。そして2ピッチでゴール。24時を過ぎ、コミチに取り付いてからは17時間。取り付を間違えたので岩に登ってた時間は19時間。下降路を探すのも危険なのでビバークです。屋根のある凹んだ部分があったので生まれて始めてのツェルトに入ってのビバーク。何しろ岩が冷たいのでほぼ一晩中うつらうつらした状態でした。明るくなってきたのでバンドを回りこんで下降路を探します。そのバンドの途中途中になんと素敵なビバーク地点が何箇所か作られていました。床が平らにされていて、しっかりと石を積み上げてちょっとした小部屋気分。次に行かれる方でビバークを余儀なくされたら、終了点から少し頑張ってバンドを回りこんでくださいね。

下降は難しくないものの、右に左にトラバースしたり、懸垂の支点を見つけるのが大変で、結構手間取ります。暗いときに無理せずに、ビバークしたのは正解でした。歩きに入ってからも足がよれよれの私はガレガレのところでこけまくり、時間くうことくうこと。
やっとハイカーが歩く平らな道に戻りチマグレンデ登攀が終わりました。ほんとうに厳しかった。
それにしても、イタリアに来る前の明星に続いて2回目の本格的なマルチピッチが500メートルの岩壁。生まれて始めての残業。生まれて始めのビバーク。贅沢すぎますね、これは。
マルチピッチのように一日中登りつづけるというのは、やはり慣れが必要ですね。ショートルートを何本か続けて登るのとはまた違った緊張と疲れがあるので、この部分はこれからの大きな課題です。
また岩が脆いので落石が多く、結構怖かった。前半はかぶっているため、あたるということはないですが。後半は上部に張り付いてる氷が溶けて剥がれ落ちてくるのも加わり、私はほぼ一日中落石におびえてました。以前もっちんがブログで落石の音を表現していたときには、まったくわからなかったのが、この音か・・・・と思い知らされました。怖いねー、あの音。

それにしても地元のいかにも普通のパーティーが文字通り駆け抜けるように登っていくこのルート。コミチルートの隣の12台が延々と続くハッセルートにも何組も取り付いているこの岩場。層の厚さ、レベルの高さ、環境の凄さ、基本技術の確実さ、どれをとっても圧倒させられることばかりでした。
緊張と疲れでこの夜から発熱し、意識が朦朧としてましたが、数日たってやっと冷静に振り返れるようになり、今まではなんとなく自分のグレードに近いルートなら適当に登ってきましたが、これから自分の求めるクライミングスタイルも確立できたような気がします。

かーばたさん、えのっきー、ほんとうにありがとうね。

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この記事へのコメント

  1. 17ピッチか・・
    日本でいえば、普通のアルパイン2回やることになるんだから、本当に大変だよね。
    俺も一度 疲れてA0しても体上がらない経験したよ。A0でも体上がらないと精神的にくるよね。
    腹の出たクライマーやハーネス付かないようなクライマーの写真は撮った?

  2. 撮らないわよー
    ばればれでしょ。
    あ、そーかお友達になったフリをして一緒に撮ればよかったか。
    ピッチ数もだけど、かぶった壁のフリーマルチって日本にあるの?
    日本の高グレードフリーマルチを少し探してみよう。

  3. そんなに生き急がないほうが・・・。
    まきーちゃん生きててナンボの人生ですから・・・。

  4. おつっす
    写真は?
    字ばっかはヤだ。
    ココんとこ新聞読むのが日課なもんで読まなくても分かるのがイイ!!

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